この事例では、開発費や在庫、売れるまでのお金と返済を見積もりました。発売前に、追加の投資を止める基準も決めました。

すぐに相談したい方へ:新しい挑戦に、いくら使えるか分からない悩みを相談する(30分・無料)→

挑戦を、どんぶり勘定で終わらせない。新商品への投資と追加投資を止める基準を見える化。

画像はAIで制作したイメージであり、実際の支援先・商品ではありません。

新商品を出したい。今のお客様に、新しい価値を届けて売上を伸ばしたい。

でも、開発にいくら使えるのか。在庫を持っても、お金は足りるのか。借りたお金を返せるのか。答えが見えず、判断に迷っていないでしょうか。

新商品に限らず、設備投資や新しい拠点でも、同じ迷いが生まれます。

今回ご紹介するのは、1年間の売上が約1億円の小売業で、新商品を売り、売上3億円を目指す計画を、お金の面から支えた事例です。今までとは違うお客様だけを探すのではなく、今のお客様にも新しい商品を届け、商売を広げる取り組みです。

民間の銀行などと政府系の金融機関が協力し、3,000万円を借りました。新商品は開発を終え、9月から販売を開始しています。販売の成果はこれからです。この事例でお伝えしたいのは、挑戦に必要なお金と、追加投資を止めるラインを、発売前に整理したことです。

「余裕があるから挑戦する」はずが、返済後の現金は増えていなかった

社長は当初、今の事業に余裕があり、その余力で新商品に挑戦するという認識でした。実際に入るお金・出るお金と、借入の返済額を並べて確かめました。すると、手元のお金はほとんど増えず、少し減ることもあると分かりました。

利益が出ていることと、次の投資に使える現金が増えていることは、同じではありません。借りたお金そのものを返す支払い(元金返済)まで含めると、手元に残るお金がはっきりしたのです。

だからといって、現状を続ければよいとも考えていませんでした。今のままでは先細りになり、将来への夢を持てない。社長は、成長への挑戦を選びました。

当社は、その思いを実現するために、必要なお金と返せる見通しを一緒に確かめます。どこまで資金を使えるか、返済を続けられるか、どの時点で立ち止まるか。社長が判断するための材料をそろえます。

開発費だけでなく、売れるまで・成長した後のお金を見積もる

新商品には研究開発費だけでなく、最初に持つ商品や、売上が安定するまでの仕入れ・給与を払うお金が必要でした。この会社では、計画上、在庫が現在の約2倍となり、仕入れから代金が入るまでを支えるお金も、2倍以上必要になる見通しでした。

そこで、売上3億円の規模になったとき、日々の仕入れや入金待ちを支えるために、いくらの資金が必要かを計算しました。さらに、開発費・初期在庫費と、事業が軌道に乗るまでの期間を資金計画に織り込みます。

目標売上だけを描いても、売れる前の支払いはなくなりません。販売が進むまでの間にも返済は進みます。その両方を並べ、手元資金がどう動くかを確認しました。

確認したこと判断したいこと
売上3億円の商売を続けるためのお金成長した事業を支える現金が足りるか
研究開発費・初期在庫費販売前に、どれだけ現金が出ていくか
軌道に乗るまでの期間売上・入金が育つまで資金が持つか
借入の返済と現預金残高返済しながら、必要な手元資金を守れるか

これらをもとに、借入額を3,000万円としました。返済の進み方と事業が軌道に乗るペースが計画どおりであれば、現金が2,000万円を下回らない計画です。これは将来の見通しであり、実際に維持できたという結果ではありません。

追加投資を止める基準を決めることで、挑戦の判断軸を持つ

今回の計画では、追加投資を止める基準を決めています。将来の現金残高が2,000万円を下回ると確定したら、追加生産・仕入れを止めます。実際の残高が2,000万円を切るまで待つのではなく、資金の見通しから判断します。

追加投資を止めるといっても、会社全体をやめるわけではありません。新たな在庫を持たず、すでに作った商品は基本的に売り切り、資金を回収することです。追加の資金流出を止め、返済に必要な資金を守るための判断です。

なお、追加仕入れを止めても、在庫が直ちに現金へ変わるわけではありません。販売・回収の状況と、すでに決まっている支払いは、その後も確認していきます。

2,000万円は、この会社の返済と資金計画を踏まえて定めた個別のラインです。すべての会社に共通する安全水準ではありません。

融資・発売の後も、毎月・毎週、お金の動きを確かめる

民間の銀行などと政府系の金融機関が協力し、必要なお金を借りることができました。新商品は開発を終え、9月から発売中です。売上3億円はこれから目指す目標であり、達成実績ではありません。

発売後は、毎月、売上・利益・現金の動きを確認します。毎週、入金と支払いの予定も確認します。加えて、毎週必ず口座残高を共有してもらいます。想定よりも早く現金が減っていれば、その理由を確認します。

毎月の商売の進み具合と、毎週のお金の動きを見る。計画との違いを見つけ、その理由と次の対応を話し合う。融資を受けた後も、この確認を続けることが支援の一部です。

項目公開時点の状況
支援開始時の事業規模年商約1億円
資金調達金融機関から計3,000万円を借入済み
新商品開発完了・9月発売、販売成果はこれから
売上目標3億円(未達成の計画値)
現金残高計画どおりなら2,000万円以上を維持する見通し
追加投資を止める基準将来の現金が2,000万円を下回ることが確定した時点

投資の前に「必要なお金・返せる見通し・止める基準」を一つの計画にまとめます。会社の規模や投資の大きさが違っても、この考え方は同じです。

挑戦の前に、
一緒に確かめたいこと。

  • 投資額だけでなく、稼働・販売までの人件費・仕入れ・在庫の資金を見積もっている。
  • 売上が計画より遅れた場合に、手元資金がどこまで減るかを確かめている。
  • 追加投資を止める基準を、始める前に決めている。
  • 補助金や融資の入金時期と、支払いの時期を並べている。

まだ答えがなくても構いません。投資の前に、社長の思いと一緒に確かめたいことです。

止める基準を、
始める前に決めておく。

止める基準は、始める前に冷静に決めておくことが大切です。投資が始まってからでは、使ったお金を取り戻したい気持ちが判断を難しくします。

株式会社Issue-Consulting(イシューコンサルティング)/代表 上野貴司(中小企業診断士)/顧問CFO/埼玉県入間市

上野 貴司
株式会社 Issue-Consulting 代表取締役/中小企業診断士

代表から聞いた実際の支援事例です。会社名は伏せています。融資実行・発売は実績、売上目標と将来の現金残高は計画として区別しています。